ZcashとMoneroは、プライバシーと匿名性に重点を置いた暗号通貨です。しかし、その実現方法や特徴には大きな違いがあります。この記事では、ZcashとMoneroの違いを以下の4つの観点から比較します。
- プライバシー保護技術
- アドレスの種類
- スケーラビリティ
- 規制への対応
プライバシー保護技術
ZcashとMoneroは、それぞれ異なるプライバシー保護技術を採用しています。
Zcashは、ゼロ知識証明と呼ばれる暗号理論を用いて、送信者や受信者、取引金額などの個人情報を開示せずに、取引の正当性を証明することができます。ゼロ知識証明とは、証明者が検証者に対して、ある事実が真であることを、その事実に関する情報を一切明かさないで、確信させることができる証明方法のことです。Zcashは、ゼロ知識証明の一種であるzk-SNARKsと呼ばれる技術を採用しており、高速で効率的にプライバシー保護を実現しています。
Moneroは、リング署名とステルスアドレスと呼ばれる技術を用いて、送信者や受信者、取引金額などの個人情報を隠蔽することができます。リング署名とは、複数の署名者の中から一人が署名したことを証明する方法で、署名者の個人情報は秘匿されます。ステルスアドレスとは、一度しか使用されない一時的なアドレスで、受信者の本当のアドレスは公開されません。Moneroは、これらの技術を組み合わせることで、取引の情報をブロックチェーン上に公開しないことができます。
アドレスの種類
ZcashとMoneroは、それぞれ異なるアドレスの種類を持っています。
Zcashには、透明アドレスとシールドアドレスという2種類のアドレスがあります。透明アドレスは、ビットコインのアドレスと同じように、取引の情報がブロックチェーン上に公開されるアドレスです。シールドアドレスは、取引の情報がブロックチェーン上に暗号化されるアドレスで、プライバシー保護が可能です。Zcashでは、透明アドレスとシールドアドレスの間で自由に取引することができます。例えば、透明アドレスからシールドアドレスに送金すると、送信者の情報は公開されますが、受信者や金額は秘匿されます。逆に、シールドアドレスから透明アドレスに送金すると、受信者の情報は公開されますが、送信者や金額は秘匿されます。また、シールドアドレス同士の取引では、すべての情報が秘匿されます。このように、Zcashでは、ユーザーのニーズに応じて、プライバシーのレベルを選択することができます。
Moneroには、一種類のアドレスしかありません。しかし、そのアドレスは、ステルスアドレスと呼ばれる技術によって、一度しか使用されない一時的なアドレスに変換されます。そのため、Moneroのアドレスは、ブロックチェーン上に公開されることはありません。また、Moneroの取引は、リング署名と呼ばれる技術によって、送信者の情報も隠蔽されます。そのため、Moneroでは、すべての取引がデフォルトでプライベートになります 。
スケーラビリティ
ZcashとMoneroは、それぞれ異なるスケーラビリティを持っています。
Zcashは、ビットコインと同じく、ブロックサイズの上限があります。現在、Zcashのブロックサイズの上限は2MBで、ビットコインの2倍です。また、Zcashのブロック生成時間は、ビットコインの10分に対して、約2.5分です。これにより、Zcashは、ビットコインよりも4倍の処理能力を持ち、トランザクションの承認時間も短縮できます。しかし、Zcashのプライバシー保護技術は、トランザクションのサイズを増加させるため、ブロックサイズの上限によってスケーラビリティが制限される可能性があります 。
Moneroは、ブロックサイズの上限がありません。その代わり、ブロックサイズが大きくなると、手数料が高くなるという仕組みがあります。これにより、Moneroは、需要に応じてブロックサイズを調整することができます。しかし、Moneroのプライバシー保護技術は、トランザクションのサイズを大幅に増加させるため、手数料が高くなる可能性があります。また、ブロックサイズが大きくなると、ブロックチェーンのサイズも肥大化し、ノードの運用コストが高くなる可能性があります 。
規制への対応
ZcashとMoneroは、それぞれ異なる規制への対応を持っています。
Zcashは、プライバシー保護のオプション性と互換性によって、規制に対応しやすいと言えます。Zcashでは、ユーザーは、プライバシー保護を有効にするかどうかを選択できるため、規制当局や監査機関に必要な情報を提供することができます。また、Zcashは、ビットコインと互換性があるため、既存の暗号通貨のインフラや規制に適合しやすいと言えます。そのため、Zcashは、多くの暗号通貨取引所やウォレットに採用されています 。
Moneroは、プライバシー保護の強制性と独自性によって、規制に対応しにくいと言えます。Moneroでは、ユーザーは、プライバシー保護を無効にすることができないため、規制当局や監査機関に必要な情報を提供することができません。また、Moneroは、ビットコインと互換性がないため、既存の暗号通貨のインフラや規制に適合しにくいと言えます。そのため、Moneroは、多くの暗号通貨取引所やウォレットに採用されていません 。
以上のように、ZcashとMoneroは、プライバシーと匿名性に重点を置いた暗号通貨ですが、その実現方法や特徴には大きな違いがあります。Zcashは、プライバシー保護のオプション性と互換性によって、規制に対応しやすいと言えます。Moneroは、プライバシー保護の強制性と独自性によって、規制に対応しにくいと言えます。ZcashとMoneroに関心のある方は、自己責任で調査や分析を行い、投資や利用の判断を行ってください。
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